ア・ソング・フォー・ユー(柴田よしき)

ずいぶん前に出ていたが知らなかった花ちゃんシリーズ。今回の4編はタイトルが歌謡曲。最初が「ブルーライト・ヨコハマ」で確かに花ちゃんが桜木町からランドマークまでゃってきてホテルのティールームで依頼人と会う。
このシリーズ、最初に読んだときに、回収されない伏線がずいぶんあるように感じたが、どうやらシリーズ全体の中でいずれは回収する、というものらしい。今回も以前の姿を消した母子のエピソードに触れているところがある。
また、緑子シリーズと共通する登場人物である山内が、どうもこのシリーズでは妙に優しい印象だが、それも花咲に対してはやはりなぜか甘いものの周囲の人間からは相当怖れられている人物として描かれる。そして名前こそ出ないものの麻生も登場。元警察官で探偵という面では花ちゃんと同じ経歴でもある。こちらも姿を見せたが、絡んでくるのはまた先のことだろう。緑子シリーズというよりなんだか麻生シリーズになってきたようなあちらのシリーズでも逆の面から描かれたりするのだろうか。

| | トラックバック (0)

プラ・バロック(結城充孝)

主人公がずっとクロハと表記されていて、そのためにかなり現実感が薄い。ただこれは仮想空間でのアゲハというのと重ねるためにわざとやっているのだろう。他の登場人物もカタカナ表記だが、置き書きで漢字表記が分かる場面がある。
機動捜査隊の女性警察官、という設定には、どうしても乃南アサの凍える牙の音道を連想する。クロハはバイクには乗らないが実は射撃の腕が一流。
舞台となる場所については地名が一切出てこないが、臨港署とか港湾振興会館というのは川崎に実在する。唯一出てくる地名の東京が隣りで、海沿いに県警本部があることから川崎なのは確実。さらに地下街の入口に宇宙船というのはもうアゼリアに間違いない。そもそも裏表紙の内側見返しにある写真は川崎マリエンそのものだろう。
ミステリーであり警察小説であるのは確か。現実感のなさの割りにはしっかりした内容だった。

| | トラックバック (0)

巡査の休日(佐々木譲)

道警シリーズ4作目。今までの中で一番よいかもしれない。複数の事件の捜査が並行して重層的に描かれているところがいかにも警察小説。
プロローグが前作の直後で、連続しているのかと一瞬驚いたが、実際の話は1年後。よさこいソーランの最中という設定が、札幌を舞台とする作品らしくなかなかうまい。
前作でサミット直前に小島百合が発砲して確保した鎌田が病院から脱走。行方不明のまま約1年たち、当時の被害女性から小島に連絡が入る。そこから、警護のため被害者とともによさこいソーランに参加することになった小島の視点、捜査本部の津久井の視点、またひったくり犯を追う佐伯の部下の新宮の視点などから並行する捜査が描かれる。
タイトルどおりに休日も結局仕事にあててしまうような警官たちが描かれている。必ずしも階級が巡査というわけではないので、警官の休日、としてもよさそうだが、シリーズの他の作品でも警官を何度か使っているからあえて見送ったのかもしれない。

| | トラックバック (0)

«マイク・ハマーへ伝言(矢作俊彦)