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Op.ローズダスト 下 (福井晴敏)

文庫は三巻に分かれているが、もともとの連載は上巻・中巻のところまで。この下巻はまるまる単行本時の書き下ろしに当たる。作者お決まりの書いているうちに長くなったパターンか。
ファイナルフェイズは全編お台場が舞台。タンゴ・パパの符牒で呼ばれるTPexを追って警察とダイスが翻弄される。そして実はヒントはときどき伏線的に与えられていた、お台場ならではのタンゴパパ移動の方法。
清掃工場にたてこもったローズダストたちの最後は再読してみるとずいぶんとあっさりしているようにも感じる。まだまだやれそうなものだが。
逆に単行本で読んだときに感じたファンタジー色が再読ではそれほど強く感じなかった。子犬のくだりはまさにそうなのだが、ローズダストが舞うというのは最初から一功が狙っていたことだったと分かるからか。
なお今回初の試みとして舞台となる場所をグーグルマップにプロットしてみた。これがかなりピンポイントで位置を特定できるのには驚き。移動の経路もけっこう具体的。他の作品も含めて再読の楽しみとなりそう。

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Op.ローズダスト 中 (福井晴敏)

中巻のみどころは横浜が舞台になっているシーンがあるところ。朋希と恵理が大桟橋ターミナルの上のウッドデッキにやってきてのどかともいえるシーンになるが、一転緊迫感のある展開。
その前のアクアシティでの攻防もアクアシティの中を歩いたことがあれば臨場感十分。ソニープラザやディズニーストアなども出てくる。
また警察小説的には渋谷のダイスの拠点ビルに銃器対策部隊が突入を試みるシーンが見どころ。並河のマル六との接触も麻生幾の警察小説あたりで登場しそうな流れ。
単行本で読んだときは気づかなかったが、終盤への伏線というかヒントのようなセリフもところどころ出てくることが分かる。

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Op.ローズダスト 上(福井晴敏)

文庫化されたので再読。単行本は上下巻だったが、文庫は上中下の三巻。
やはりこれは警察小説といっていい。中年男と若者の組み合わせはこの作者お得意のパターンだが、この作品では中年男が警視庁公安部の警察官であることでキャリアとノンキャリア、公安と警備と刑事などの対立がくっきり描かれ、最大限の警備体制の描写もリアル。そして公安のイメージを裏切るような、ハムの脂身の異名をとる並河警部補の造形がまたポイント。
赤坂でのビル地下爆破やウイルスがコンピューターに入り込む様子、時間にすればコンマ何秒というところの描写はまさに作者の独壇場。
ストーリーの舞台を気にしながら読んでいたが、上巻では赤坂や霞ヶ関、それに門前仲町あたりが多く、青海や台場はまだ少ない。

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暴雪圏(佐々木譲)

帯に「超弩級の警察小説」とあるが、これは警察小説とは呼べない。著者のやはり道警を描いた「うたう警官」のシリーズや親子三代警視庁警察官の「警官の血」はまごうことなき警察小説だが、この制服捜査のシリーズはちょっと違う。むしろ保安官ものと分類できるだろう。大沢在昌の「パンドラ・アイランド」と似た系統ともいえる。
ストーリー自体はリーダビリティ抜群でかなり読ませる。巨大な密室ものといえなくもないが、別にトリックはないし、駐在警官が探偵役になるわけでもない。爆弾低気圧に覆われて交通が遮断した十勝地方で、訳ありの人物たちがひとつのペンションに集まって、という展開。その集まっていくまでの過程が詳細に描かれる。ただ最後のほうは吹雪の収まり同様少しあっけない。もっと引っ張ることもできただろうに。
舞台の志茂別周辺の道路がかなり詳細に書かれているが、帯広の南部にそういう地名は見当たらない。モデルとなる場所もありそうだが、地図と突き合わせてまで読んでいないので特定はできなかった。国道の橋というのがポイントになりそう。
北海道を舞台にした作品を多く書いている著者ならではの作品。

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0〜3さい はじめての「ことば」(小林哲生)

タイトルはさらに頭に「ことばの疑問あれこれ」とつく。実際、内容はQ&Aの締める割合が大きい。2008年12月の刊行なのでかなり最近の本。そもそもサンプルとして取られている最初のことばとその時期については、gooのこども語辞書への登録から抽出したものとなっている。
以前相方の蔵書の岩波新書を読んで、内容が期待していたものとかけ離れていてしかもほとんど理解できなかったが、そのとき読みたかった内容はほぼこの本の内容といっていい。大部分を占めている質疑よりは、むしろ具体的なことばの例の部分がその読みたかった内容に当たるが、個別に詳しい解説をするようなものでもないので、ちょうどよいくらいかもしれない。
著者のスタンスはあくまで、指南書やアドバイスではなくて、科学的に根拠のある事実の紹介、といったところにあり、早期教育に対しては繰り返し効果が証明されていないと警鐘を鳴らしている。
バブバブ期、モゴモゴ期、ポツポツ期、スラスラ期、ペラペラ期とだいたいの月齢で分類しつつ、時期にあまりとらわれすぎないようにとも注意を促している。シンプルだがそのぶんかえって説得力もあり、またいかに乳児対象の怪しげな商売が多いかも実感させられる。

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ルート66、66のストーリー(大塚浩司)

何度もルート66を走った著者ならではのマニアックな視点も交えたエッセイ集。もともと地方紙への連載であまり手を入れないまま間まとめたのか、同じ章で、小見出しの後がその前と重複する部分が多いのが少し気になる。
アメリカインディアンに思い入れが強く、自らもナバホネームを持つというだけあって、そこの話の寄り道がやけに長い。そろそろ66に戻って欲しいと思ったあたりで、カーズの話になり俄然興味深く読む。マニアならではの着目で看板が実在のものをモデルにしていてちゃんと向きによって変えてあるとか、路面の様子もリアルに再現しているとか、コーンのモーテルのモデルはインデイアンの住居を模したモーテルだとか。
話の舞台があちこちに飛ぶので、せめて州の境と主な都市名くらいをルート上に並べた簡単な地図をつけてほしいところ。話に登場するインターステートの番号をいちいち入れだすと繁雑になるだろうが、そのくらいは欲しかった。もっともあとがきで書いているように、詳細な地図で綿密にプランニングする行為自体を嫌っている様子。
いろいろアドバイス的なところも多く、実際に走る機会があるなら手元に持っていくと重宝しそう。

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私は赤ちゃん(松田道雄)

育児書を探していて見つけた岩波新書。これはかなりよい本。
著者はその筋では著名な人らしく相方も学生時代の教本で使われていたという。
初版が1960年というからかなり古い。なにせ岩波新書の青版である。図書館で借りたら1985年の版だったが、書店で見るとちゃんと2008年にも重版がかかっていた。
赤ちゃんの視点で生後2日目から1歳半くらいまでに起こるさまざまな事件が語られる。これがなかなかにユーモラスな語り口で、新書という実用書の形態よりは小説として読むほうが読み方としてあっているように思える。なにせ内容自体は相当古いし、病気関係の記述は現代ではおそらく通用しないものとなっているだろう。赤ちゃんはパパママと呼んでいるが、挿絵では和服姿だったりするし、ラジオを情報源としていたりするのも時代を感じさせる。そこを当時の風俗と考えれば、読み物としての価値はむしろ高まる。
ちなみに舞台は京都か大阪あたりのようで、作中の父親や母親は標準語で話すが、回りの人物は京都弁や大阪弁だったりする。私鉄沿線の団地に住んでいるようで、この団地の造りへの批判なんかも出てくる。
すべて見開きで完結していて、尻切れトンボのようなところもあるが、次の見開きに続いていることもある。やはりもとは連載で媒体は朝日新聞だったらしい。
豊富な挿絵がいわさきちひろというのがなかなか贅沢だが、なんと名義は岩崎千尋と漢字表記。
著者の著作で有名なのは「育児の百科」らしいが、そちらも読み物としてそのうち読んでみたいところ。わりあい最近岩波文庫のラインナップに入ったようだからやはりもはや古典なのだろう。 

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