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誉れあれ(東直己)

作者は札幌を舞台にした探偵ものミステリーを多く書いているが、自分はその作品を読んだことがなかった。一方札幌を舞台の警察小説では佐々木譲が道警シリーズで先行して地位を固めている。それに刺激されてかどうかは知らないが、同じく札幌を舞台とする警察小説を出してきたので初めて読んでみる。
まず意表をつくのは中央署南支署という設定。支署という組織は実際にはどこにもないはずだし、今野敏のベイエリア分署も実際には臨海署なのに分署呼ばわりされている、という設定となっていたはず。
この本の正式名称自体が「札幌方面中央警察署 南支署 誉れあれ」であって、小説推理への連載時にはこれの「誉れあれ」がないタイトルだったらしい。「誉れあれ」は本文中の74ページに出てくる警察歌「銀嶺映ゆる」の最終行から取ったものだろう。
支署にしては「あっち」こと中央署と対等の立場のようで、さらに妙にキャリアが多い。所轄だとせいぜい大規模署の署長だけくらいのものだろうが、ここでは支署長も副支署長も担当次長クラスも軒並みキャリアというのが違和感がある。
ストーリーとしては、最初所轄の交番勤務の熱心な若い警察官が刑事になっていく様子をじっくり描くものかと思ったが、展開が激しくて結局キャリアの派閥争い的な話にまで広がっている。正直終盤はちょっとついていけないくらいに話が転がっていく印象。
佐々木譲の道警シリーズ同様にここでも実在の事件の現職警部が覚せい剤密輸にかかわっていた事件に触れられている。ちなみにここではその警部の名前は花井。元上司の自殺や本部長の議会での謝罪についても触れられていて、さらにその当時の道警本部長が、登場してきている。目新しいのは北の関与を積極的に描いているところか。
札幌の地理には詳しくはないが、南いくつ西いくつとシンプルに場所が示されて少なくともブロックは特定できるところが多い。たぶんそのあたりは作者お得意なのだろう。

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