カテゴリー「4.その他の本」の記事

植物図鑑(有川浩)

野草料理小説少女漫画風、といったところか。
表紙カバーのイラストのキャラでそのまんま少女漫画になりそうな話の展開。行きがかりでイケメンを拾って、というストーリーはいかにもな感じ。女性の作者ならではの視点もうかがえる。
ただ主題は野草。雑草ともいうが、そこは作中で何度も繰り返される昭和天皇の言葉があるので。あとがき以降道草という言葉も出ていて、まさに文字通り道草を食う話ではある。もっともこの作者のあとがきは少なからず作品のイメージが変わるので、作品を読み終えるまで読まないように我慢するべき。
舞台がどこかはほとんどヒントがないので特定のしようがないし、どこかモデルの場所が実在するかどうかも分からない。標準語圏ではあるようなので首都圏のどこかなのだろうが。そもそも具体的な地名がゆずポン酢の説明で馬路村が出るだけだった。高知の話が出てくるのは作者の郷里だからだろう。
「料る」という言葉が説明なくでてきて何かと思ったが、どうやら狩ると対で使っていて、料理するという意味らしい。はじめて聞いた。
巻頭と巻末に植物の写真がそれこそ図鑑のようにカラーで収録されており、章のタイトルになっている花や草以外にも作中に登場する野草はすべて網羅している様子。カーテンコールの作品に出てくる花もきっちり収録。そのカーテンコールには、本の冒頭に出てきたヘクソカズラらしい花も出てきてうまく一巡してまとめた感じもする。それにしてもやはり有川作品にははずれがない。

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子育てハッピーアドバイス(明橋大二)

相方がママ友から借りたシリーズ第一巻。通勤の往復で一日で読めるだろうと思ったら、往路だけで読み終えてしまった。イラスト・漫画が多用されているだけあってやけに早く読める。相方はイラストのタッチも絶賛。
ポイントとしては子どもの話を聞くことの重要性と聞き方、甘えさせることの重要性と甘やかすことの違い、叱るときの注意点、母親へのまわりのサポートの方法、働く母親へのフォロー、といったところか。
甘やかすのではなく甘えさせる、という点は別の本でもあったが、そのときは作者のスタンスに反感しか覚えず全く納得が行かなかった。この本では逆にすんなり受け入れられる。
しかし驚異的なのは奥付にある刷り数。05年12月と意外に最近の本だが、読んだ本は08年2月でなんと167刷。ベストセラーの絵本でもなかなかない刷り数だが、よほど小ロットで小分けに印刷しているか相当売れているかのどちらかだろう。出版社がずいぶんとマイナーなところのようなので両方かもしれない。

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神の領域(堂場瞬一)

サブタイトルに「検事・城戸南」とあるように、横浜地検の検事である城戸が主人公。一人称で書かれているようでいてときどき「城戸は」と三人称になるのが違和感がある。
文庫カバーの紹介文には「あの鳴沢了も一目置いた」とあって、確かに鳴沢シリーズの最終巻で鳴沢がこの本の主人公に呼ばれて横浜までやってきていたが、この本には鳴沢は全く出てこない。この流れからすると同じ中公文庫ということもあって、鳴沢シリーズの後継シリーズのように思えるが、シリーズ化されておらず、今のところこれとは全く別の失踪人調査課のほうが何冊か出ている様子。結局検事より刑事のほうが書きやすいのか、あるいは娘が失踪した刑事のほうが引っ張りやすいと思ったか。
横浜地検が舞台というのは先日読んだ乱歩賞受賞作の「検察捜査」と同じ。検事が自ら捜査をするという点でも同じか。ただ街を書けているかという点では「検察捜査」のほうが上だったといえる。この作品はその点はどうも今ひとつ。分からないのは横浜地検まで走れば10分の距離という陸上競技場。そんなところにあっただろうか。43歳の主人公が高校の頃からあるのだからマリノスタウンはありえないし、三ツ沢だと遠すぎる。かといって伊勢佐木や関内あたりだとせいぜい高校のグラウンド程度しかないはず。これが話の都合のフィクションだとするといっきに現実味のないつまらない話になってしまうが。大学などももっと所在地を特定できるように書いてほしいところ。
舞台の地図。1箇所ニューヨークで特定できてしまう場所を入れたらやたらと広範囲になってしまった。

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MM9(山本弘)

MMといってもみなとみらいとは関係ない。ここでいうMMとはモンスター・マグニチュード。台風や地震同様に怪獣災害が頻発しており、それを予測し対処方針を決めるのが気特対こと気象庁特異生物対策部、という設定。怪獣災害というのはともかく、気象庁が対策の中心という設定は秀逸。
もともと「海の底」の解説で怪獣小説のひとつとして紹介されていたものたが、平成ガメラ好きならこれはおすすめといえる。怪獣が出るのが当たり前、というならその設定だけで特に説明もいらいのだが、SFだからか理屈をつけている。ビッグバン宇宙とは異なる神話宇宙に従っているという説で、それはそれで納得はいくが別になくてもよい小難しい理屈のようにも思う。
舞台の場所がそれぞれに実在の場所なので妙にリアル。この作者の作品は初めて読んだがなかなかの手練れ。
舞台の地図

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スヌーピーたちの宇宙旅行(チャールズ・M・シュルツ)

今年の9月の刊行となっているが、いつのまに出たのか全く知らなかった。しかも書店ではなく図書館のヤングアダルトコーナーで偶然見つけた。そもそもメトロポリタンプレスという版元自体知らない。主婦の友社が最近出している人生案内と同じ版型で、カバーの作者プロフィールなども同じようだが、関連はないのだろうか。
内容としてはアストロノーツ展の展示内容を本にしたようなものという印象。ふりがながいちいちふられているがおかげでかえって読みづらい。いくら振り仮名を振っても元の単語が星間分子雲とか知的生命体とかのように難解なら無意味な気がするのだが。
前半は宇宙のおはなし、として宇宙や星、宇宙開発の歴史を文章で概説。中盤にピーナッツコミックの宇宙がらみのものが並べられていて、最後には日本人宇宙飛行士二人からのメッセージ。
コミックの部分は69年の3/8-3/15のスヌーピーの月面着陸関連、95年10/2-7のウッドストック月にいきスパイクに出会う、のほかいくつかを収録。これらをまとめて読めるという意味では意義のある本かもしれない。もっともアストロノーツ展に図録があればちょうどこんなふうになっただろうという気もするが。

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子育てハッピーアドバイス小児科の巻(吉崎達郎)

タイトルは正式には「子育てハッピーアドバイス 知っててよかった小児科の巻」であり、今までのシリーズの明橋大二とその同僚である小児科医の吉崎達郎の共著という形。
風邪に対する一般的なイメージだけでも実はずいぶんと誤っていることが分かる。曰く、風邪を治す薬というものはなく、薬は風邪の諸症状をやわらげるだけ、しかも咳や発熱などの症状は身体が風邪と戦って排出しようとしているのであり、抑えるべきではない、という。
しかし実はこれは「育児の百科」で30年も前から主張されていたことと同内容のような気もする。いまだに世間が追いついていないのかもしれない。もっとも漫画も満載で字も大きいこちらのシリーズの一冊という形のほうがずっと読みやすいことは確か。
なにかあるとすぐ病院に行けとか薬を飲めという人間がいるが、つまりあれは間違いということだ。病院などいっても無駄に長く待たされたあげくに別の病気をもらうことになりかねない。赤ちゃんなら機嫌よくしていれば家で様子を見ていたほうがずっと無難ということらしい。

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宵山万華鏡(森見登美彦)

今回は祇園祭の前の晩に行われる宵山が舞台の短編集。
表紙カバーのイラストがテイストは全く異なるものの、発想は図書館戦争シリーズと全く同じ。すなわち話に出てくる重要な小道具をランダムに配置。これは読んでいくにつれて意味がそれぞれ分かってくるという効果がある。
森見ワールドつながりはここでも健在。風雲偏屈城の設置に携わった演劇サークルの舞台係という人物が出てくる。他にも古道具屋など実は他にも出てきているのかもしれないし、赤玉ポートワインの名もときどき出てきている。
6編の短編からなるが、それぞれ視点は異なる。表紙中央にもいる姉妹の妹の視点が一編目で最後が姉の視点というのはうまく戻ってきたようでもある。ラビリンスという言葉は出ないものの、迷宮という語はタイトルでも出てきていて、こちらもそこから抜け出せないかのような錯覚に陥る。
それにしても坊主や花魁が何度か出てくるが、舞台裏を描いたともいえる一編とはどうにもイメージが異なり別の人物のよう。乙川という人物が鍵なのだろう。
舞台の地図はこちら

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ららら科學の子(矢作俊彦)

500ページを超えるボリュームだがストーリー自体はさほど複雑ではない。むしろ話の展開よりも描かれている風景こそが主役といえるかのような小説。
主人公は1968年に学生運動の最中に日本を脱出し中国へ渡りそのまま中国の田舎で30年間暮らしていた人間。30年ぶりに戻った東京を歩き回り、30年前の風景と重ね合わせつつ、中国での暮らしの回想も入る。そして当時の数々の映画の記憶。ビジネスホテルでテレビやビデオも見るようになってからは最近の映画なども語られる。
出てくる街は銀座や渋谷、青山や三軒茶屋、それにお台場など。単行本の刊行は2003年だが、98年当時からいまやさらに10年以上たっているため、30年間変わらずに残っていた店が今は閉店してしまっていたりもする。
固有名詞はほとんど出てこないが、調べてみるとちゃんと実在する店などが多く、それでいくと食事をしている店もそこにいけば分かるのかもしれない。もっともこの10年で閉店していなければだが。
舞台の地図はこちら

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スヌーピーたちの人生案内2(チャールズ.M.シュルツ)

確かにシュルツ氏によるピーナッツコミックの1シーンがいろいろと出てくるが、シュルツ氏の著作かというとちょっと違う。しかし編集者は特にクレジットされていない。谷川俊太郎氏もコミックを訳しただけで、コミックのセレクトには関わっていないだろうし。
2とあるように続編。最近はやりの大人向け絵本の一つといったところか。ピーナッツコミックの1シーンを人生、教訓、確信などのキーワードを軸に切り取って、ピーナッツギャングたちの意味深なつぶやきを一種の人生訓としている。
章の扉の見開きだけはコミックをまるまる収録しているが、それ以外は枠もなく1コマを片ページに大きく取り上げて、そこでのセリフを見開きで原文・翻訳・つぶやいた人物の名前とあわせて収録するスタイル。
マニアならこれがいつのどのコミックかというのを突き止めるのも楽しいかもしれない。

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機動戦士ガンダムUC10(福井晴敏)

10巻に及んだユニコーンガンダムもついに完結編。しかし作品中の期間にすると実は1ヶ月程度のことらしい。ともあれ、最終巻にしてシャアの再来ことフロンタルとの決着もつくがその正体は今更ながら衝撃。
ずっと引っ張られていたラプラスの箱の秘密も明らかにされる。それだけのこと、といってしまえばそれまでで、開放しても何も変わらない、という予測もなされるが、微妙なパワーバランスの支点であることは変わらず、そのあたりは福井節の得意とするところともいえる。
エコーズがダイスに似た組織だとは思っていたが、920とか729とか出てくるともう福井ワールド全開。
OVAの形でアニメ化されるらしいが、小説ならではの心理描写も多いこの作品、見る機会はないだろうが、福井作品の映像化として多少興味はあるところ。

やっと完結したことだし過去の感想もリンク
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